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2019/02/20

ロボアドバイザーのベンチマーク 後編



 前回の投稿の最後で「ロボアドバイザーを選択する理由を見出せない」と締めくくりました。それは「低コストなインデックスファンド」という優れた選択肢が有るにもかかわらずロボアドバイザーを選ぶ理由が薄いということです。その理由について解説していきます。


・高コストである


 一般的なロボアドバイザーの手数料は年率1%前後です。ここへさらに運用対象ETFの信託報酬が加わります。現在投資信託業界では低コスト革命が起きており、売れ筋のインデックスファンドは信託報酬0.1~0.3%台にて運用されています。信託報酬以外のコストを含めた実質コストにおいても、0.3%前後の商品が主流となっています。文字通り一桁違います。

 前回投稿にて仮想WealthNavi13年平均リターンを4.12%と算出しました。一方の8資産均等は3.58%です。「eMAXIS Slim バランス 8資産均等型」の実質コストは0.23%ですから、リターンからコストを引くと3.35%です。WealthNaviは手数料1.00%、長期割引により0.90%まで下がりますが、ETF信託報酬が0.10%ですから手数料と合わせ1.00%であることには変わりありません。算出した4.12%から引くと3.12%まで下がってしまい、シミュレーションでは8資産均等に負けてしまいます

 また、運用ETFから受け取る分配金は一旦受益者へ渡されるため、20.315%の税金が発生します。源泉徴収を控除された後に再投資となるため複利効果が落ちます。一方Slim8資産は分配金を出さずそのまま再投資されるため、課税されることなく効率よく運用され複利効果が高まります。(課税繰り延べ効果)

 ※米国籍ETFであるため、米国以外の地域から発生した分配金には現地、米国、日本の3重課税が課せられる点にも注意が必要でしょう。確定申告を行えば外国税額控除により一部取り戻すことができますが、そういう説明がパッと出てくるところに書いてありますかね?

 一応、WealthNaviにおいては「DeTAX」というシステム(損失が出ているアセットと分配金やリバランス時の売却益を相殺することで節税する)が導入されていますが、下落相場においては効果を期待しても良いでしょう。しかし経済活動をベースとした量的緩和による適度なインフレを前提とした自由主義資本主義経済が世界の潮流である限り、効果は限定的と言わざるおえないです。(むしろそういう前提でなければリスク資産へ投資する意義が有りません。)

 これらのことからロボアドバイザーは高コスト商品であり、低コストインデックスファンドを毎年1%前後上回る成績を残さなければ手数料負けしてしまうことが分かります。

・不明瞭である


 通常、投資信託においては様々な情報が開示されています。交付目論見書に始まり月次レポート、運用報告書が適時発行されます。これらは商品を購入していない人でも閲覧でき、ファンドのコンセプトはもちろんのこと信託報酬以外のコストを含む実質コストやベンチマークとの乖離率、その理由、マザーファンドの状況と、非常に細かく情報収集が出来ます。

 ロボアドバイザーの場合はどうでしょう。WealthNaviのwebサイトを見ましたが、一般には公開されておらず購入者への報告のみの様ですね。運用されている方のブログを拝見しましても、ちょっと情報少なすぎませんかね。

 仮にもお客様の資産を預かるわけですから、購入前に詳細なデータを得ることが出来ないというのはどうでしょう。よくわからないものに投資するな、とよく言いますし。運用の結果、発生したコストの詳細を万人へ開示するべきです。


・iDeCoとNISAで取り扱っていない


 これこそ最大の問題点です。両制度とも運用益は非課税であり、iDeCoに至っては全額所得控除の対象となるため、課税所得が多ければ多いほど節税効果が高くなり、相対的に運用損益の押上となります。

 これらの税制優遇制度を活用し、ソレでも資産が余りある。という状況においてはじめて選択肢としてロボアドバイザーが登場するのではないでしょうか。節税に勝る資産運用は有りません。法人税が安い国や地域へ大企業が本社を構えるのは伊達ではないのです。


結論「ほかにやるべきことが有る」


 ※資産運用の大半は元本を保証するものではありません。それらリスクを理解したうえで自己責任にて運用してください。元本毀損が許せない方へは定期預金をお勧めいたします。

明日も20時更新ですが、所用のため軽い記事です
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